ウゴービは2023年3月に厚生労働省に承認され、2024年2月22日から日本で発売された肥満症の治療薬です。一定の条件を満たすことによって、保険適用で処方してもらえます。
ウゴービの使用で肥満症の人が減量できれば、生活習慣病の予防につながります。
また、条件に当てはまる人が適正に使用することで、さまざまな健康障害を防ぐことも期待されます。ただし、ウゴービはダイエット目的では処方してもらえないため注意が必要です。
ここからは、ウゴービの効果や副作用、保険適用で処方される条件について詳しく解説します。また、同じ有効成分「セマグルチド」を主成分とするリベルサスやオゼンピックの違いについても紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
こちらのページは医学的・専門的な内容の為、当院院長の三島 雅辰監修の元作成しております。
ウゴービは、セマグルチドを主成分とする注射タイプのGLP-1受容体作動薬で、BMI27以上の肥満症から使用できます。
2023年3月に厚生労働省から肥満症治療薬として承認され、2024年2月22日に日本で発売されました。肥満症の治療薬としては30年ぶりの新薬で、条件を満たせば保険適用で処方してもらえます。
投与方法はオゼンピックと同じく、週1回の自己注射です。用量は0.25mg、0.5mg、1.0mg、1.7mg、2.4mgがあり、最初は0.25mgからスタートして4週ごとに投与量を増やしていきます。
ウゴービを使用することで、食欲を抑制することができます。また、胃の働きを緩やかにし、消化スピードを遅くすることで、満腹感を持続させることができます。
ここからは、ウゴービの効果について詳しく解説します。
食べ過ぎを予防する
食欲は脳の視床下部でコントロールされており、血糖値が上昇することで視床下部にある満腹中枢が刺激され、食欲を抑える指令が出されます。
ウゴービを使用すると脳に作用して食欲を減らすことができるため、自然と食べる量が張り、体重が減少します。
満腹感を得られる
ウゴービには胃の働きを抑制し、消化スピードを緩やかにする働きがあります。胃の中に食べ物が長時間留まることで、満腹感を得られる時間も長くなります。
以前より少ない食事量でも満腹感を得られやすいため、食べる量が減り、摂取カロリーを少なくすることができます。
基礎代謝をアップさせる
ウゴービには、余分なエネルギーを脂肪として蓄える「白色脂肪細胞」を、余分なエネルギーに変えて放出する「褐色脂肪細胞」に変えて、基礎代謝を向上させる働きがあります。
そのため、脂肪が燃焼されやすくなり、太りにくい体質へと変化します。
ウゴービの副作用には、主に以下のようなものがあります。
・胃腸炎・食欲減退・頭痛・浮動性めまい・味覚不全
・糖尿病網膜症・心拍数増加
・悪心・下痢・嘔吐・便秘・消化不良・吐き気・腹痛・腹部膨満
・腹部不快感・胃食道逆流性疾患・鼓腸・胃炎・胃酸過多・口内乾燥
・胃排出遅延・胆石症・注射部位反応・疲労・無力症・早期満腹
・倦怠感・脱毛症・不眠症
ウゴービの重篤な副作用には以下のようなものがあります。
・低血糖
・急性膵炎
・胃腸障害
・胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸
ウゴービには血糖値を下げる作用がありますが、ごく稀に低血糖が起こることがあります。
初期症状として、倦怠感や脱力感、強い空腹感、冷や汗、顔面蒼白、動悸、振戦、頭痛、めまい、吐き気、視覚異常などが起こります。
また、急性膵炎が生じると、嘔吐を伴う激しい腹痛が起こります。副作用の症状が出た場合は、速やかに医師の診察を受けてください。
参考サイト:医療用医薬品 : ウゴービ
ウゴービの禁忌に該当するのは以下のような人です。
・ウゴービの成分にアレルギーがある人
・糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡や前昏睡の状態にある人、1型糖尿病の人
・2型糖尿病を患う人の重症感染症や手術など緊急の場合
これらに該当する場合は、ウゴービではなくインスリン製剤を使用して血糖管理する必要があります。そのため、ウゴービの使用は禁忌となります。
ウゴービとの併用を注意すべき薬は以下のような糖尿病薬です。
・ビグアナイド系薬剤
・スルホニルウレア剤
・速効型インスリン分泌促進剤
・α-グルコシダーゼ阻害剤
・チアゾリジン系薬剤
・DPP-4阻害剤
・SGLT2阻害剤
・インスリン製剤等
2型糖尿病の人は、ウゴービ以外に糖尿病治療薬を使用していることが多いです。これらの薬との併用で、血糖降下作用が強くなるため、低血糖になるリスクが高まります。
また、ウゴービを使用して血糖値が急激に改善されると、糖尿病網膜症が一時的に悪化する可能性もあります。そのため、既に網膜症を患っている人は注意が必要です。気になる症状があれば、速やかに医師の診察を受けてください。
ウゴービの投与対象となるのは、高血圧症や脂質異常症、2型糖尿病のいずれかがある肥満症の人です。
その中でも、食事療法と運動療法を合わせて行っているにも関わらず、十分な効果を得られない人で、BMIが35 以上、もしくは以下の肥満に関する健康障害が2つ以上あり、BMI27 以上という条件があります。
・耐糖能障害(2型糖尿病、耐糖能異常)
・脂質異常症(高脂血症)
・高血圧症
・高尿酸血症(痛風も含む)
・冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)
・脳梗塞または一過性脳虚血発作
・非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
・月経異常または女性不妊
・閉塞性睡眠時無呼吸症候群
・運動器疾患
・肥満関連腎臓病
ウゴービは2型糖尿病や高血圧・脂質異常症、BMIなどの条件があるため、他の糖尿病治療薬に比べて処方されるハードルが高いといえるでしょう。
ウゴービは薬の量によって価格が5段階に設定されています。保険適用前後の1回あたりの価格は以下のとおりです。
薬の量 | 保険適用前の価格 | 保険適用後の価格 |
---|---|---|
0.25mg | 1,876円 | 562円 |
0.5mg | 3,201円 | 960円 |
1.0mg | 5,912円 | 1,773円 |
1.7mg | 7,903円 | 2,370円 |
2.4mg | 10,740円 | 3,222円 |
肥満治療でウゴービを使用する場合は、保険適用で処方されますが、ダイエット目的の自由診療で処方してもらうことはできません。
自由診療のメディカルダイエットには、医療機器を用いる方法や、リベルサスやオゼンピックなどを使用したGLP-1ダイエットがあります。
ダイエット目的でGLP-1受容体作動薬を使用する場合は、体質や目標に合わせて、医師と相談しながら自分に合ったプランを選ぶことが大切です。
ウゴービは使い切りの注射薬で、週に1回を目安に腹部・太もも・上腕に自己注射します。
注射する部位は毎回変更し、注射ごとに2~3cmずつ位置をずらして投与してください。また、静脈や筋肉に注射しないように注意しましょう。
最初は0.25mgから始めて、4週間の間隔で0.5mg・1.0mg・1.7mg・2.4mgと増量し、その後は2.4mgを週1回皮下注射します。
ウゴービを使い忘れた場合の対処法
ウゴービを使い忘れた場合は、次に注射する日までの期間によって対処法が異なります。
次に注射する日までの期間が48時間(2日)以上なら気付いた時点ですぐに注射します。ただし、次の注射まで48時間(2日)未満なら、その時点では注射せず、次に予定している曜日に注射してください。使用し忘れたからと言って、2回分をまとめて注射してはいけません。
また、週に1回注射する曜日を変更する場合は、前回の注射から少なくとも72時間(3日)以上間隔を空けてください。
ウゴービを使用する際の注意点
ウゴービを使用している間も食事療法や運動療法を継続しましょう。使用中は定期的に医師の診察を受け、体重や血糖、血圧、脂質などの検査が行われます。3~4ヶ月継続しても改善されない場合は使用を中止します。
ウゴービは持続性製剤であるため、使用中止後も薬の作用が持続します。万が一、副作用が起こった場合は医師や薬剤師に相談しましょう。
ウゴービの用法用量に関する注意点は以下のとおりです。
・保険上の適用は成人
・妊娠中や妊娠の可能性がある人、授乳中の人は投与しない
・高齢者は特に副作用に注意が必要
ウゴービは添付文書上では成人のみに対する用法用量が記載されており、小児に対する用法用量についての記載はありません。添付文書上の成人は15歳以上となっていますが、実際に有効性を検証する試験では、18歳以上の成人が被験者となっています。
また、妊娠中や妊娠の可能性がある人、授乳中の人はウゴービを投与できません。高齢者の場合は、適用条件を満たす場合に限り投与できます。ただし、高齢者は身体機能や生理機能の低下から、副作用が起こりやすいため注意が必要です。
ウゴービは条件を満たすことによって、保険適用で処方される肥満治療薬です。オンライン診療で処方してもらうことはできず、病院やクリニックを受診して、医師の対面診療を受ける必要があります。
ただし、病院ならどこでも処方できるわけではありません。内科、循環器内科、内分泌内科、代謝内科、糖尿病内科があり、日本循環器学会、日本糖尿病学会、日本内分泌学会のいずれかから、教育研修施設の認定を受けた医療機関でしか処方してもらえません。
さらに、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病、肥満症の治療に精通した専門医資格をもつ医師が1人以上在籍していることも条件となります。
ウゴービは肥満治療薬ですが、ダイエットを目的とする場合は、同じセマグルチドを主成分とするGLP-1ダイエットがおすすめです。
GLP-1ダイエットでセマグルチドを含む薬を使用する場合は、治療ではないため保険適用外の自由診療となります。セマグルチドを含む代表的なGLP-1受容体作動薬には、リベルサスとオゼンピックがあります。
薬剤 | ウゴービ | リベルサス | オゼンピック |
---|---|---|---|
保険適用の有無 | 保険適用 | 保険適用外 | 保険適用外 |
成分 | セマグルチド | セマグルチド | セマグルチド |
投与周期 | 週1回 | 1日1回 | 週1回 |
投与方法 | 注射 | 経口 | 注射 |
投与上限量 | 2.4mg | 14.0mg | 1.0mg |
オンライン診療 | × | ○ | ○ |
ウゴービはダイエット目的では使用できず、オンライン診療でも処方してもらうこともできません。
一定の条件を満たした人だけに保険適用で処方される肥満治療薬です。
ウゴービは誰でも保険適用される?
ウゴービは一定の条件を満たしている場合に限り、保険適用で処方されます。
保険適用されるのは、2型糖尿病や高血圧・脂質異常症のいずれかに該当する肥満症の人で、BMI35以上、もしくは肥満に関する健康障害が2つ以上あるBMI27以上の人に限られます。
ウゴービには違法性がある?
ウゴービは日本でも承認されている肥満治療薬で、医師の診断のもとで処方されたものなら違法性はありません。
ただし、個人輸入の通販などで入手した場合は違法の可能性もあるため、必ず医師の診察を受けて処方してもらいましょう。
ウゴービの有効成分は?
ウゴービの有効成分はセマグルチドです。ただし、オゼンピックなど他のGLP-1受容体作動薬と比較して最大投与量が異なります。
ウゴービに含まれるセマグルチドの最大投与量は2.4mg程度です。一方、オゼンピックの場合は1.0mg程度となります。
ウゴービの方がセマグルチドの最大投与量が多いため、より高い効果が期待されることも。ただし、身体への負担が大きくなる可能性もあるため、医師の診察のもとで自分に合った薬を選んでください。
ウゴービは肥満症に効くの?
ウゴービは肥満症患者に有効ですが、使用できる人は限られています。
日本ではBMIが35以上の高度肥満症患者、またはBMIが27以上で肥満に関連する健康障害のある患者に処方されます。また、体重が重いだけではなく、肥満によって健康問題が起きていることが条件となります。
ウゴービは体重が何キロ痩せる?
ウゴービは過体重または肥満の成人で、日本人585人を含む5,085人が参加した国際共同研究「STEP臨床試験プログラム」の結果に基づき承認されています。
「STEP臨床試験プログラム」のデータによるとウゴービ2.4mgを投与して68週目のときに、平均10kg以上の体重減少が認められています。
ウゴービの適応年齢は?
ウゴービの適応年齢は、添付文書によると「成人」のみとなっており、小児への用法用量の設定はありません。
添付文書上の成人は15歳以上を指します。ただし、ウゴービの臨床試験では、18歳以上の成人が被験者となっています。そのうち日本人の被験者は20歳以上です。
ウゴービは何日分まとめて処方してもらえる?
ウゴービは新薬に該当するため、最初の1年間は2週間ごとの処方となります。そのため、当面は2週間ごとに医師の診察を受けられる人にしか処方されません。
現在、最大投与期間は68週までとなっていますが、今後変更される可能性もあります。
ウゴービの使用は危険なの?
ウゴービは肥満症の治療薬として保険適用で処方してもらえます。
ただし、強い薬であるため、専門知識のある医師の指導のもと、適切に使用しなければ健康被害が出る危険性があるでしょう。